2009年10月19日月曜日

まとめ。



日本に戻ってから、早くも10日以上が経ってしまいました。あっというまに日常になじんでしまって、ロンドンで過ごした日々がなんだか夢のようです。






fallonでの仕事も終わったところで、この半年間の成果をここで報告しようと思います。

まず、とあるスナック菓子の来年度のキャンペーンで、僕のアイディアを採用してもらうことができました。多分今ごろ、Vコンをつくってグルインをやってるハズです。この作業を途中で抜けなければいけなかったのが、帰国するにあたって一番の心残りでした。CMのオンエアがイギリス国内のみで、しかも来年の春以降というかなり先の話なので、日本ではあまり見る機会がなさそうなのですが、youtubeとかにアップされればここで紹介できると思います。

もうひとつ、これも更に気の長い話の上に大人の事情で詳細を書けないのですが、2011年に発売されるとある商品のアイディアとして、僕の案がクライアントさんに大変気に入っていただけているそうです。現在、製造ルートとか流通のこととかを調査してるらしく、もし何の問題もなければホントに製品化されるみたいです。みなさん、幸運を祈ってください(笑)。

正直、最初の1,2カ月は仕事についていくだけで一苦労といった感じだったのですが、後半は慣れてきたこともあり、参加したプロジェクトでは大体1,2案はアイディアをプレゼンに出して貰えるようになったのは嬉しかったです。

出発する前、欧米の広告クリエーティブは凄い個人主義&競争社会という話を聞かされていました。実際、そこで働いてみると確かにそれは事実であるものの、想像していたようなギスギスした感じは全くありませんでした。3,4年での転職があたり前というドライな面はあるものの、その分みんな個人のつながりを凄く大切にするし、いいアイディアや仕事に対しては年齢やバックグラウンドに関係なくリスペクトします。これは、とても素晴らしいことだと思います。

僕個人の話になりますが、2年前に30歳という節目っぽい年齢を迎えたこともあり、ここ数年は結構ネガティブな競争意識にとらわれる事も多かったのですが、この半年ですごく解放されることができました。勝者の影に必ず敗者がいるスポーツの世界とは違い、クリエーティブの世界では全員が勝つことが可能だし、媒体や職能によるくくりがどんどん無くなっている今の時代では、その勝ち方もたくさんの種類があるハズです。






せっかくロンドンで働いてきて、向こうに友達もたくさん出来たので、「いい経験をした」で終わったらもったいないと今は思っています。これが終わりではなく何かの始まりであることを願いつつ、このブログは一旦ここで終了するものの、閉鎖はせずに残しておきます。近い将来、また更新するチャンスもあると思うので。

半年もお付き合いいただいて、本当にありがとうございました。予想を超えたアクセス数があり、初めての土地(しかも海外)で働くにあたって、すごい励みになりました。ロンドンと日本で僕をサポートしてくれたすべての人たちにも、この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。

10月いっぱいは休養する予定ですが、11月からは仕事に復帰する予定です。何かあれば、気軽に連絡ください。


ではでは。




2009/10/19 橋口幸生
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2009年10月8日木曜日

キャドバリー。

おかげさまで6日のお昼に無事帰国しました。あっという間に東京の日常に戻ってしまい、ロンドンでの半年間がなんだか夢のようです。

で、最後の更新をする前に、書き損ねていたこのネタだけ。

fallonの代表的なクライアントのひとつ・キャドバリの最新CMの発表会が、先日社内でありました。当時は一般公開前だったので載せられなかったんですが、もうイギリスでOAされ始めてかなり経つので、その時の様子を書こうと思います。




スクリーンと椅子が用意された地下のオーディトリアムにみんなで集合。




お菓子も用意されていました。当然、すべてキャドバリー商品で、どれもウマい!ビールが用意されることも多いけど、この日はなぜかありませんでした。

では、CM本編をどうぞ。




今回のお題はフェアトレード。商品の原材料の生産者を搾取せず、きちんとした対価を支払おうというアレです。キャドバリーの場合、チョコの原料のカカオを生産しているガーナの人たちと、フェアトレードをしているというメッセージになっています。

んで、このキャンペーンの概要は「Glass and a Half Full Records」というレコード・レーベルをつくり第1弾シングルを発売し、売上をチャリティーに寄付するというものです。つまり上の動画は、CMであると同時にPVにもなっているんです。この仕組みは新しいなぁと思いました。

今までSonyやCadbury、Tate britainなど、どちらかというとトラディショナル(嫌いな言葉だけど便宜的に使用・・・)な広告でいいものをつくってきたfallonが、こういう新しいチャレンジをしている事実は、広告という言葉の定義がどんどん広がっていることの表れだと感じました。実際、半年間仕事をしていて、CMとかポスターとかウェブサイトとかじゃない”仕組み”の提案を求められる機会は、結構多かったです。

キャドバリーの広告は名作ばかりなのでクリエーターは皆やりたがるのですが、僕も最後の一カ月になって担当させてもらえる機会がありました。その内の1案が、いま結構イイ線までいっているそうなので、みなさん幸運を祈ってください(笑)



次回、最終回です。

2009年10月5日月曜日

最終日。

今日の夕方のフライトで帰国。

あれこれちょっと忙しいので、最後の更新は日本に帰ってからにしようと思います。

残り2日。

もう残り時間もわずか。思い切り観光客気分で大英美術館に行ってきました。



今回、日本の土偶特集をやっていたんですが、縄文初期から後期まで土偶がどのように変化したのかが実にわかりやすく展示されていて、すごく面白かったです。土偶が現代日本に与えた影響ということで、諸星大二郎の「暗黒神話」まで展示されているというすさまじい徹底っぷり。(話はズレるけど、「風の谷のナウシカ」の作画はそもそも諸星大二郎がやるはずだったという噂は、本当なんだろうか)

美術館のスタッフが、日本の文化や歴史を30分くらいで簡単にレクチャーしてくれる企画があったんですが、オランダが日本にもたらした影響について語っていたところ、その場にいたポルトガル人のおばっちゃんが「銃を日本に伝えたのはポルトガルよ!」と激怒していたのには笑いました。

いろいろな土偶や美術品が展示されていた中でいちばん印象的だったのは、縄文時代につくられたというブローチ。粘土でつくられた簡単なものなんですが、真ん中に赤ちゃんの足型が押してあるんです。今よりずっと乳児死亡率が高かった当時、子どもの思い出を大切にとっておくために作られたんでしょう。縄文時代なんて大昔過ぎて想像もつかないけど、これを見た瞬間、急に身近に感じられました。

司馬遼太郎がどこかで「人間の泣くことと笑うことはいつの世も変わらない」と書いていましたが、どんなに時代や人種が違っても共感できることって、意外とあるはずです。僕も日本人コピーライターとして、言葉を言い訳にしないで世界と仕事をしていきたいと感じました、

残り3日。




コロンビアロートにあるパブ「The Royal Oak」で、マットが送別会を企画してくれました。

偶然にもこのお店、沖さんに連れて行ってもらった、僕がロンドンで初めて行ったパブなんですよね。最初のパブと最後のパブが偶然同じ店って、ちょっと不思議な感じがします。

いろいろな人が入れ替わり立ち替わりやって来てくれて、夕方3時から翌朝3時くらいまで何も食べずにずーっと飲んでました。こっちで飲んでいると、 「外国人選手とは試合をしたくない」というスポーツ選手の気持ちが、よく分かります(笑)。みんな体力が全然違う!

でも、朝方までみんなと別れを惜しめるというのは、やっぱり嬉しいものですね。

ホテルにて。

金曜にフラットをひきはらい、トラファルガー広場にあるホテルに移動しました。




メードさんに渡すチップを部屋に置いておくとき、適当な絵を一緒に描いておいたんですが




メードさんからも絵で返事が。




しかも、ティッシュで折ったバラの花までつけてくれました。写真だと分かりにくいけど、かなり上手。


こんなイキなはからいをしてくれるホテルもあれば、そうじゃないホテルもあります。


ここで少しだけ触れたホテル、ネット環境が悪くリアルタイムで更新できなかったこともあり書くチャンスを逸してたのですが、このまま放置しておくのも気持ち悪いので一応簡単に書いておこうと思います。

9月末、イギリス西部に行った際に泊まったホテルなのですが、特徴を箇条書きに記してゆくと・・・






・↑こんな感じの気色悪い絵が、廊下やエントランスのみならず、部屋の中にいたるまでそこら中に貼られてる。しかも、中には100万ポンドとか異常な値段で売られているものも。

・絵と同様に、有名人の写真もそこら中に飾られていて、しかも全員某カルト宗教とのかかわりが噂されている人ばかり。この時点で怖くなったので地元の人に聞いてみると、そのカルト宗教の経営するホテルであることが発覚。

・ホテルのオーナーがやけに馴れ馴れしく話しかけてくるんだけど、話題があらゆる病気や中毒を治療できるヒーリング療法とか、そんなのばっか。

泊まった女性全員が、夜中の3時~4時頃に、部屋のドアがすごく強くノックされる音を聞いている。男は誰一人気づいていないことから、女性客だけを狙ってやった模様(目的はいまだに不明)。実害は無かったものの、相当怖いです。


他にも部屋が狭くて汚い上にシャンプーもハブラシも用意されていないなど、別にどんな信仰を持とうと自由だけど、ホテルとして最低限やるべきことすらやっていないのは問題ですね。

イギリスのホテルにはあまりいい思い出がないけど、このホテルは中でも突出してました。

2009年10月3日土曜日

fallon最終日(ロンドン残り4日)、その2。

昼ごはんを済ませた後、1Fで仕事をしてた時のこと。













まったくのサプライズだったんですが、みんなが僕の似顔絵Tシャツを着て、挨拶をしに来てくれました。似顔絵はマットが描いてくれたものですが、笑っちゃくらい似てます(笑)。みんないいヤツすぎる・・・こんなことされたら、帰りたくなくなるよー(涙)。驚きと嬉しさで、本気で目頭がアツくなりました。





その後は企画をCDに見せにいき、「I like it!」というコメントをもらい、最終日が終了。




あっという間だったけど、ホントに濃い毎日だったなぁ。この6カ月で、今後10年間くらいの企画のネタを仕入れたような気がします。




ありがとうfallon。Maybe see you soon!




※このブログ自体は、あと少しだけ続きます。